2020年12月31日木曜日

ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」 ウルバンスキ&トロンハイム交響楽団

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」
クシシュトフ・ウルバンスキ指揮 トロンハイム交響楽団

 このプレイリストを開始した頃は、1週間に2エントリーを目標にしていたが、5日ごとのペースに落ち着いてきた。これが今年最後のエントリーになる。
 最近はクシシュトフ・ウルバンスキの録音や動画を頻繁に聴いている。彼は大変な才能。まだ30代前半で、この動画が撮影された頃はまだ20代だったろうと思う。
 トロンハイム交響楽団は、決してメジャーなオーケストラではないが、ウルバンスキの才能に惚れ込んでいるのがよく分かるし、ウルバンスキも魔法をかけたようにオーケストラから様々な表情を引き出している。
 この人の指揮は見ていて本当に面白いし、美しい。彼と同時代に生きて、彼の音楽が聴けるのは幸福だ、とさえ思う。
 演奏後にキャーという黄色い声援が飛ぶのもクラシックでは珍しい(笑)

2020年12月25日金曜日

佐藤晴真 The Senses 〜ブラームス作品集〜

佐藤晴真 The Senses 〜ブラームス作品集〜

 10月にTHE MOSTのコンサートで、初めて佐藤晴真さんの生演奏を聴き、言葉で表現しようのない暖かくて美しい演奏を聴いて、「こんな音がチェロから出るんだ。」とビックリした。
 まさに、「一目惚れ」ならぬ『一聴惚れ』である。

※写真はCDのジャケット

The Senses ブラームス作品集
チェロ:佐藤晴真 ピアノ:大伏啓太

ブラームス/チェロ・ソナタ第2番
 〃 /メロディーが導くように
 〃 /森に覆われた山の上から
 〃 /死、それは涼しい夜
 〃 /子守唄
 〃 /チェロ・ソナタ第1番

https://open.spotify.com/album/6jzkU53ekMACSGDqIO8eov?si=YW9jCe9PSVGKQYcoH9GGTg
※Spotifyへのリンク

 私はコンサート前には出来るだけ予習(楽曲やソリストの音源をあらかじめ)するタイプで、もし、彼がTHE MOSTのコンサートの前に音源を出していたら、予習していただろう。しかし、佐藤さんの演奏を「予習」することなく、しかも、コロナ禍で生演奏から8ヶ月も遠ざかって聴いたものだから、彼のこの美音・麗音を聴いた瞬間の衝撃は忘れられないものになったと思う。

 コロナ禍の影響でレコーディングも延期になり、半年遅れで発売されたようだ。しかし、ライナーノートによると、そんなハプニングはレコーディングに好影響を及ぼしたらしく、活動自粛期間中を挟んだ後の収録では佐藤さんとピアノの大伏さんのコンビネーションが熟成し、コロナ禍以前よりも手応えのある演奏が録れたようだ。

 佐藤さんは、ドイツ音楽の正統的な演奏家の登竜門とされる、ミュンヘン国際コンクールに日本人で初めて優勝。もちろん技術的にも申し分ないのだけれど、若くて圧倒的才能を持つ『俊英』にありがちな尖ったところがなく、風格のある落ち着いた演奏で、奏でる音からは、美しさ・麗しさ・気品にあふれている。

 低音が重厚なのに暖かい「声色」でよく歌うのだ。例年よりも寒いこの冬に、この演奏を聴いていると、地面に暖かさが拡がっていき、聴き手の足元からその暖かさが染み渡ってくるような感覚になる。

 2曲のチェロ・ソナタの演奏も絶品だが、このアルバムの聞き所は、ブラームスの4つの歌曲のチェロ編曲版。チェロが持つ人間の声のような暖かさと、佐藤さんの奏でる歌を存分に堪能できる。

2020年12月19日土曜日

ベートーヴェン/交響曲第7番 スクロヴァチェフスキ&読響

ベートーヴェン/交響曲第7番

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮 読売日本交響楽団

 ベートーヴェンの交響曲第7番にドはまりしている昨今、5日前のズヴェーデン&ニューヨーク・フィルの感想エントリーで『Spotifyでなるべく演奏者の情報を見ないように聴いていくと「おっ!これだ!」という演奏に2つ出会った』と書いたのだが、もう一つの演奏がこのスクロヴァチェフスキ&読響。

 ジャケットにスクロヴァチェフスキの顔写真があるから、さすがに指揮者は判って聴いたものの、あとでオーケストラを確認して読響と知ったときは、「やっぱ日本のオーケストラも凄い」と嬉しくなった。

 非常に緻密な演奏で、一つのフレーズ・音符も疎かにせず、各パート間が絶妙な連携を見せ、曲の構造がよく分かる演奏になっている。ドイツのオーケストラだと250年の歴史の「暗黙知」の蓄積があって、それが絶対的ともいえる演奏表現上の強みになるのだけれど、ミスターSが、この読響という高性能オーケストラの性能を存分に生かして、徹底的に洗い直した演奏は、日本のオーケストラの強みを生かしたものかも知れない。

 この音源に関する世評はなかなか探し当てられなくて、ネットを徘徊してようやく見つけた、と思ったら、ずっとブログを購読していたmokotomochi58さんの記事だった。

 もっと注目されて良い音源だと思う。

2020年12月15日火曜日

ベートーヴェン/交響曲第7番 ズヴェーデン&ニューヨーク・フィル

 ベートーヴェン/交響曲第7番

ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

https://open.spotify.com/album/2Ea0P4zvAU34ysALxdDEQW?si=s2r0mM8jSvmKjSMCgI0W0w
※Spotify

 先週の川瀬賢太郎&岡山フィルのベートーヴェン7番を聴いて、改めてこの曲の面白さに開眼。緻密に複雑なパズルを組み上げていくような演奏が聴きたくて、この曲の第3楽章をSpotifyでとっかえひっかえ聴いていた。いわゆる名盤とされる演奏には、なかなかフィットするものが見つからず、なるべく指揮者やオーケストラの情報を見ずに直感で聴いていくと、「おっ!これだ!」という演奏に2つ出会った。
 そのうちの一つが、このズヴェーデン指揮ニューヨーク・フィルのライヴ録音。第1楽章からじっくり聴いていくと、これはなかなかの演奏だ。この曲の構造の緻密さをこれほど深くえぐり出した演奏はなかなか無いのではないか。
 ズヴェーデンの録音は、このブログでもすでにブルックナーの交響曲全集を取り上げているが、今、かなり好きな指揮者になってきている。 

2020年12月10日木曜日

シューマン/交響曲全集 サヴァリッシュ&ドレスデン・シュターツカペレ

 シューマン 交響曲全集

ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮 ドレスデン・シュターツカペレ


https://open.spotify.com/track/5sOFwgxzI5UFy37nbLUmgz?si=GExmPHCpQa2_uQF5-Wvb2Q
※spotify

 シューマンの交響曲は聴けば聴くほど味わい深い。この演奏とは古くからの付き合いだが、自分の中で色褪せることはない。特に、1番・2番は古今の録音の中でも最上の演奏だと思う。たぶん何十回を超えて何百回と聴いているのにまったく飽きない。

 どの曲も、弦の鋭い入りと、アクセントを強めにとって、非常にきびきびした演奏になっている。ティンパニも木のマレットを使っていると思われ、色々工夫も見られるが、何よりも響きの美しさに魅せられる。奏法の豊穣な響きを保ちながら、ぎっしりと旨みの凝縮された爽やかな演奏が聴ける。自分にとって一生の愛聴盤になっている。

 そして何よりもSKDの素晴らしい響き、エネルギーの強さだ。SKDのこの漲るエネルギーは、自ら作り出したものではなくて、私たちが住むこの世界に元々存在するものを、上手く集めてきて音楽に変換して出している、そんな自然な感じがある。

2020年12月5日土曜日

ドビュッシー/ピアノ作品集 田部京子

ドビュッシー/ピアノ作品集 田部京子

 大学時代からの数少ない盤友から「お前、ショパンあれだけ苦手やのに、ドビュッシーは大好物なんやな、合点がいかんわ」と言われたことがある。ドビュッシーが苦手な人は多いらしい。


https://open.spotify.com/track/1srOj2TZ9VWRUgs75jDo9v?si=GdWmE8DaTQiNNos7kOUB0Q
※Spotify

https://pref-okayama.ml.naxos.jp/album/CHAN9912

※NML(岡山県立図書館利用者IDからログインするURL】

 ピアノ曲をあまり聴かない僕がドビュッシーだけはよく聴くようになったのは、この田部さんの演奏との出会いがあったことが大きい。仕事がめちゃくちゃ忙しかった20代後半。土曜日もほとんど休日出勤して日曜日は昼まで泥のように眠り、ようやく起き上がったあとにボーッとしながらこのアルバムを聴いていた。あの時に3年間だけ住んでいたアパートの部屋から見えるサルスベリの木の風景が目に浮かぶ。

 音を「紡ぐ」というのはこういうことか、と思うような繊細で丁寧な音楽。景色が揺らぐような幻想的な世界を、芯のしっかりとした音で紡いでいく。