2021年1月30日土曜日

ハイドン/交響曲全集vol.1(6番、17番、35番、96番) 飯森範親&日本センチュリー響

ハイドン/交響曲全集vol.1
交響曲第6番、第17番、第35番、第96番)
指揮:飯森範親
日本センチュリー交響楽団

※Spotify

 日本センチュリー交響楽団が2015年から続けている「ハイドン・マラソン」シリーズのライブ録音である。同楽団はかつては大阪府から補助金を受ける公立オーケストラだったが、現在は民間団体として経営しており、財政的には厳しい状況に置かれている。そんな中で10年以上の時間をかけてハイドンの全曲演奏会を続け、恐らく世界初となるDSD(ハイレゾ)録音のハイドン交響曲全集の完成を目指している。
 センチュリー響の録音や生演奏を聴くまではハイドンの交響曲はよく出来ているなあとは思いつつも、いかんせん曲数が多すぎて、どの曲が何番かの区別がついていなかったが、このシリーズのSACDがリリースされる度に購入してじっくり聴いていくと、これはまさに宝の山だと気づいた。
 ストリーミングは一部しか登録しない方針のEXTONレーベルには珍しく、SpotifyやNMLで全曲の聴くことができる。
 記念すべき最初の収録曲は、初期の作品の傑作:第6番「朝」だ。ハイドン29歳頃(エステルハージ家の宮廷楽長に就任直後)の作品と言われており、すでに作曲家・音楽家としてのキャリアは充分だったろう。そのため、この6番は合奏協奏曲の形式を残しつつも、交響曲としての聴き応えという観点では、楽曲の完成度がすでに非常に高い。
 モーツァルトの交響曲は、(私の聴き込みが甘いのかも知れないが)じっくりと鑑賞して楽しくなるのは28番以降で、27番より前の交響曲はなかなか食指が伸びないのだが、ハイドンの交響曲は作曲技法が確立されてからの作品がほとんどなので、宝の山なのだ。

 96番「奇蹟」も聴きもの。飯森の指揮は、アクセントやクレッシェンドは鋭いが、全体的には絶妙のバランス感覚で、徹底的に心地よいサウンドを目指している。木管のソロが絶品で、弦楽器を中心にしたピュアトーンが心地よい気品あふれる「センチュリー・サウンド」を楽しめる。

2021年1月24日日曜日

ブルックナー/交響曲第7番(ハース版) 大植英次指揮 大阪フィル

 ブルックナー/交響曲第7番(ハース版)

指揮:大植英次 大阪フィルハーモニー交響楽団 

 2006年の演奏のライブ録音。SACDで出ているが、SpotifyやNMLでは聴くことが出来ない(fontecは参加していない)。

 今の大フィルの常任指揮者の尾高忠明がブルックナー演奏で一時代を築きつつあり、この大植とのコンビの録音が埋もれつつあるが、いや、これはどこまでも美しい演奏。現実世界から浮遊して、神話の世界へと迷い込でいくような美しさ。

 第4楽章では、天に召されたようなビジョン(幻視)が見えるよう。朝比奈時代に培われた艶のある弦の音を一層磨き上げて、大植の特徴でもある、徹底的に磨き抜かれた「美」を追求している。一方でマーラーやR.シュトラウスの指揮で見せるダイナミクスの振幅の大きさやアゴーギグの変化は用いず、あくまで正攻法。 朝比奈時代に比べるとオーケストラのアンサンブルの精度が格段に上がっている一方で、大フィルの特徴である、弦楽器が主導する息の長い濃厚なアンサンブルが聴ける

 もっと聴かれて良い演奏。

2021年1月20日水曜日

ベルリオーズ/幻想交響曲 大植英次指揮 大阪フィル 

ベルリオーズ/幻想交響曲
指揮:大植英次指 大阪フィルハーモニー交響楽団 2003年9月定期演奏会


 YOUTUBEを徘徊していたら、この動画に釘付けになった。大植英次が大阪フィル音楽監督に就任して2回めの定期演奏会。音を聴いて驚いたのは、まだまだ朝比奈時代の音が色濃く残っていること。第4楽章〜第5楽章のマッシブな音は、往年の大フィルの音だ。
 一方で、大植英次の美的センスに磨かれたピュアな音がそこかしこで感じられる。僕は2009年2月の定期演奏会で幻想交響曲を聴いているが、その時よりもこの動画のほうがオーソドックスな解釈。
 関西地区のNHKで放送されたものらしく、大植さんの解説も見られる。

2021年1月15日金曜日

ブラームス/交響曲全集 スウィトナー&ベルリン・シュターツカペレ

 ブラームス/交響曲全集

オトマール・スウィトナー指揮 ベルリン・シュターツカペレ

 スウィトナーの家具職人のような丁寧な作りこみと仕上げ、そして何よりオケの独特の響きにすっかり魅了される。このシュターツカペレ・ベルリンは、木管・金管は不足無いけれど、同じ旧東独の歌劇場オケのドレスデン・シュターツカペレに比べると、弦については一段落ちる感じはする。でも、なかなか他のオケの演奏では聴けない、独特の味がある。特に2,3番が素晴らしすぎる。最近のピリオド奏法で、この味わい深さ、豊穣な音が出せるのだろうか。東ベルリン・イエスキリスト教会での録音で、音もいい。

2021年1月9日土曜日

Small gifts -Christmas and winter songs- 森野美咲&木口優人

Small gifts -Christmas and winter songs- 
ソプラノ:森野美咲
ピアノ:木口優人

※Spotify
※Youtube

 再度の緊急事態宣言の発令、そしてアメリカでのまさかの時大統領に先導された「議会占拠暴動」・・・
 私の人生の中でも、これほど異様な冬は無い。世の中全体が興奮状態にあって、疲れてしまっている。
 そんなときに届いた「小さな贈り物」。森野さんの優しくも力強い歌。センス抜群のアレンジで奏でられる美しいピアノ。岡山出身のお二人が奏でる心があたたまる歌。2020〜21年の冬は、こういう音楽にも巡り会えた冬だった、と記憶しておきたい。
 それにしても森野さんのスザンナを聴いたのは、ちょうど2年前のニュー・イヤー・コンサートだったのか。再び森野さんの舞台を見る日まで頑張ろう・

2021年1月5日火曜日

マーラー/交響曲第9番 バーンスタイン&ベルリン・フィル

マーラー 交響曲第9番ニ長調
レナード・バーンスタイン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1971年 ベルリン・フィルハーモニー・ライヴ
https://open.spotify.com/album/4DYOkqD6bd45W0l3Bt1dOl?si=amFcqh66RZSlmaBtbvxIBQ

 このオケが、指揮者と共にホンキを出したら想像を絶するような演奏になる、ということを実感させられる。散歩や家事の時間に軽く「ながら」聴きできるような演奏ではないが、プレイリストには絶対必要。
 この曲は、ハイドン、モーツァルトから始まった、独墺系交響楽の最終到達点。名曲、などという陳腐な単語で持って表現するのは忍びない、クラシック交響楽最高の財産。
 第1楽章の宇宙の誕生のような壮大な世界。第2楽章の支離滅裂の狂気、第3楽章の疾風怒濤、そして聴き手を臨死体験のような世界に連れて行く最終楽章。これを超える演奏は未来永劫出ないだろうな。