2021年7月31日土曜日

ライヒ/music for 18 musicians デュルプト&アンサンブル・リンクス

ライヒ/music for 18 musicians(18人の音楽家のための音楽)
指揮・ヴィブラフォン
ピアノ:レミ・デュルプト
アンサンブル・リンクス
※Spotify

カタログ番号:0015043KAI
録音:2020年3月 フランス、ストラスブール、テアトル・デ・マイロン

 ライヒの代表作にして、ミニマル・ミュージックの『古典』でもある。
 発表当時の1970年代の半ば頃は革新的な音楽だった筈だが、2021年に生きる自分にとつては、どこか懐かしさや居心地の良さを感じる。この曲で完成したライヒの作曲技法は、映画やTVなどの商業音楽に取り入れられ、ミニマル的な音楽は巷に溢れかえっている、いわば「僕たちの音楽」だからだろう。
 ジョン・アダムスはよく聴くのだが、実はライヒやグラスは普段はあまり聴かない。でも時々、無性に聴きたくなる。BGMとして聴いてもいいが、音楽だけに集中して聴くと、頭がリセットされ、スッキリした気持ちになれる。
 正直、誰の演奏が一番優れているのか、判定は難しいのだが(というか、この曲を瑕疵無く演奏できるだけで、凄い能力だと思う)、テンポ感が一番自分に合う、レミ・デュルプト率いるアンサンブル・リンクスで。

2021年7月24日土曜日

ブルックナー/交響曲第5番 ヘレベッへ&シャンゼリゼ管弦楽団

ブルックナー/交響曲第5番
指揮:フィリップ・ヘレヴェッへ
シャンゼリゼ管弦楽団


※Spotify

 古楽器奏法で演奏されるブルックナー、しかも5番。登場当時に話題になった音源。しかも、ベルギーの指揮者とバリバリのフランスのオケの演奏。どんな変化球で聴かせてくれるのかと期待して聴くと、いやいや確かにブルックナーのオルガン・サウンドが、『グオー』と、いう迫力のある、しかもとてもピュアな音で楽しめる。
 久しぶりに聴いてみると、最近のドイツのオーケストラでもこういうピュアな音を指向する演奏も多く、ある意味、時代を先取りした録音だったかも知れない。
 細部にまで神経が行き届いていて、至って「まじめなブルックナーの5番」だ。颯爽と進むリズム感が、この曲につきまとうボッテリしたイメージを払拭してくれる。特に第4楽章の二重フーガの所は、スパッスパッとなで斬りにして颯爽と進んでいくので、聴いていて気持ちがいい。

2021年7月17日土曜日

ドヴォルザーク/交響曲第7番 ノイマン&チェコ・フィル

ドヴォルザーク/交響曲第7番

指揮:ヴァーツラフ・ノイマン

チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

カタログ番号:SU3706
1982年 プラハ、ルドルフィヌムでの録音

https://open.spotify.com/track/7wFWy0bL2u18Or3t5oPG34?si=YqcPeEvhRGq6HaIXgnhl6w&utm_source=copy-link&dl_branch=1

※Spotify

 先日の岡山フィル定期での演奏に触発されて、ドヴォルザークの7番ばかり聴いている。 

 「何も足さない 何も引かない」とは、サントリーのウイスキー「山崎」のキャッチコピーだったが、このノイマンのドヴォルザークの80年代の新盤は、そんな演奏。木の香りがするような弦の柔らかい響きにいぶし銀の輝きの金管、生き生きと鳴る木管。それをとっても素晴らしいチェコ・フィルの音を最大限に美しいハーモニーで仕上げ、重厚さ、推進力も充分。

 10代の頃に浴びるほど聴いたこのノイマン&チェコ・フィルのドヴォルザーク、そしてチェコ・フィルの実演(演目は9番)に接した時の感動。何もかもが詰まった思い出深い演奏。

2021年7月9日金曜日

ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲『展覧会の絵』ほか、ロト指揮 レ・シエクル

ムソルグスキー/ラヴェル編:組曲『展覧会の絵』
ラヴェル/ラ・ヴァルス
指揮:フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
レ・シエクル


https://open.spotify.com/album/3ryotLjkinxFRUpzsmLj1V?si=gqu8p0noT5iGyj6QfhZ4iQ&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify


カタログ番号:HMM905282
2019年11月 フィルハーモニー・ド・パリでの録音

 今、オーケストラ界で話題になっているのは、このロト&レ・シエクルと、クルレンティス&ムジカ・エテルナだが、どうもクルレンティスの方は、あまり好きにななれていない。一方で、このロトの音楽にはなんとも言えない魅力を感じている。おそらくクルレンティスも、実演を聴けば印象はガラッと変わるのだろう。

 そのディテール、特にダイナミクスと音価へのこだわりは強烈だった。かといって、音楽の形式感が前に出すぎたり、四角四面しすぎないのほ、フランス語のリエゾンとアンシェヌマンのような、次のフレーズへの滑らかな受け渡しが見事だからだと思う。

 マーラー1番の音源の感想でも書いたが、弦楽器の音が少しソリッド過ぎる気がするが(ボリューム感のある弦楽器の音づくりは、やはり100年以上の伝統があるモダン・オーケストラには敵わない)、ラヴェルのオーケストレーションを透かし見るような見通しの良いアンサンブルが気持ちいい。
 大好きな「リモージュの市場」は、知る中で最速の演奏。あまりの神業に何度も繰り返し聴いている。
 そして、「ラ・ヴァルス」も最高にいい。各楽器のソロ(トランペット、フルートが素晴らしすぎる)が秀逸、超絶上手い管楽器を中心に、見事に融合されたハーモニーが聴ける。

2021年7月2日金曜日

プーランク/六重奏曲 レ・ヴァン・フランセ

プーランク/六重奏曲 レ・ヴァン・フランセ


https://open.spotify.com/album/5CEtotdyyrYoVLQ38SKRTC?si=4udwaiJ8SbeyyT5c74Yuiw&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify

 レ・ヴァン・フランセのメンバーは・・・
エマニュエル・パユ(フルート)
フランソワ・ルルー(オーボエ)
ポール・メイエ(クラリネット)
ラドヴァン・ヴラトコヴィチ(ホルン)
ジルベール・オダン(ファゴット)
エリック・ル・サージュ(ピアノ)

 とまあ、メンバーを見るだけで目もくらむような陣容。管楽アンサンブル界では、アンサンブル・ウィーン=ベルリンと人気・実力ともに双璧を成す。

 アンサンブル・W=Bかアポロン的な均整の取れた堂々としたアンサンブルを聴かせるなら、このレ・ヴァン・フランセはオルフェウス的な、蠱惑的なアンサンブルを聴かせる。
 このピアノと木管の六重奏ばかり集めたアルバムにはモーツァルトやベートーヴェンの五重奏曲もあるか、レ・ヴァン・フランセの特徴が一番出ているのが、このプーランクの六重奏曲だと思う。

 流行りの表現を使うと、「控えめに言って、最高!!」。強奏する場面でも柔らかさを失わず、弱音の場面の美しさや香り立つようなニュアンスの豊かさにクラクラしてしまう。ル・サージュのピアノが絶妙な味付けを施していて、一人ひとりが個性的な音を持っているこのアンサブルを繋いでいるのは、このル・サージュのピアノだろうと思う。