2022年3月26日土曜日

メンデルスゾーン/交響曲第3番「イタリア」第4番「スコットランド」 沼尻&日本センチュリー響

メンデルスゾーン/交響曲第3番「イタリア」、第4番「スコットランド」
沼尻竜典指揮
日本センチュリー交響楽団



https://open.spotify.com/track/1viBW1K3nUJKG312T1Z2rU?si=QNGFK80ZS4exTTQRrtYklg&utm_source=copy-link
※Spotify

e-onkyo music からダウンロード。DSF(2.8Mhz/1bit) 音源

 僕がこれまで聴いて来た「スコッチ」と「イタリア」の中で、一番の録音かも知れない。それほど賛辞を尽くしたい素晴らしさ。
 スコットランドについては、まず木管陣が良い!特に第2楽章の弦の刻みと木管のハーモニーの中から、クラリネットの持丸さんの霧が晴れる様なさわやかな演奏に惚れ惚れ。


 第1楽章ではヴァイオリンとチェロの掛け合いがあり、チェロ・セクションの心の琴線に響く歌も聴きどころ。コントラバスも重厚かつよく歌う(コントラバスがこれほど歌うのはこのオーケストラの特徴)。沼尻さんのタクトは、ダイナミクスやテンポに心地よい「揺れ」「揺らぎ」があり、全体では流れにまったくよどみがなく、音楽が滔々と流れていく。第1楽章の前奏はオペラのアリアのように歌わせせ、センチュリーも切ないほどに情感豊かに歌う。
 「イタリア」の方は、冒頭の弦のピチカートの芳醇な音と、木管のタンギングに導かれて有名な旋律が流れた瞬間、『もう完璧!』と思った。テンポよく流れていくが、マイナーに変わったあたりから熱を帯びていき、聴き手の集中力は自然と引き出され、あっという間に楽章の最後まで行ってしまう。
 この2曲に共通するのが、センチュリーのバランス感覚。もちろん沼尻さんの手腕によるところ大なのだけれど、その沼尻さんのタクトに見事にこたえて、絶妙のさじ加減で音楽のバランスを保つんよなあ。そして一瞬たりとも音楽が弛緩する(一息つく)ところがない。

 この音源はハイレゾ音源で持っていて、スマホにも入っているので、実際にはNMLやspotifyで聴くことは、ほぼ無い(笑)。寝室のミニコンポにUSBに入れたハイレゾ音源を再生すると、これで充分に高音質で聴ける。CDからの再生だとやや硬い音で音場の広がりも狭く、「まあ、ミニコンポだから仕方がないかな」という妥協が必要。ところがハイレゾ音源を再生した瞬間、文字通り息を飲みます。弦楽器の立ち上がりの空気感や、木管楽器のブレスやタンギングのリアルさ、金管の華々しさ。どれもCDよりも何倍も音がいい。



2022年3月19日土曜日

ブルックナー/交響曲第4番 ティーレマン&ウィーン・フィル

ブルックナー/交響曲第4番変ホ長調
指揮:クリスティアン・ティーレマン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団



カタログNo:19439914112
録音時期:2020年8月21,22日
録音場所:オーストリア、ザルツブルク祝祭大劇場

https://open.spotify.com/track/0K2UolbDsYKl811euVNJg4?si=rOZnKw9WRaiC0yscNhnxyw&utm_source=copy-link
※Spotify

 ウィーン・フィルが満を持してティーレマンと取り組んでいるブルックナーの交響曲録音。

 これまで8,3,4,2番とリリースされており、どれもティーレマンの確固たる世界観が反映された力作になっているが、今のところ一番気に入っているのがこの4番の録音。
 第1楽章や第4楽章の中間部などでのティーレマンらしいウィーン・フィルのパワーを全開にした重厚で推進力のある部分もあるが、全体としては繊細で美しい。とにかくウィーン・フィルの美しいサウンドが印象に残る。恣意的な部分がほとんどなく、ティーレマンにしては意外なほど「素朴」な世界が広がっていく。朝比奈隆も愛したハース版を使っているのも興味深い。
 ストリーミングで音源を再生しているのに、音楽の美しくも豊かな世界に没入していくと、スマホもパソコンもなく、時間がゆっくり流れていた19世紀の世界に居るような錯覚を覚えてしまう。
 もしかするとモダンオーケストラの性能を駆使した絶後のブルックナー録音になるかも知れない。そんな予感もする。

2022年3月11日金曜日

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 ヤンソンス &ウィーン・フィル

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番
指揮:マリス・ヤンソンス
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


https://open.spotify.com/track/58N2obLNG5rLiIXqlujten?si=tE1kHvlNTrS7u4vXZ2ZY3A&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify

1997年1月7-14日ウィーン、ムジークフェラインザールでのライヴ録音
カタログ番号:WPCS23148

 かつてEMIから出ていたベルリン・フィル、ウィーン・フィル、オスロ・フィル、Sペテルブルグ・フィル、ピッツバーグ響など色々なオーケストラとの全集中の一枚。どのオケを振っても壮年期の勢いのあるヤンソンスのサウンドを聴かせてくれる。
 ウィーン・フィルを振ったこの5番はこのオーケストラの持つ弦楽器の圧倒的なアンサンブルや管楽器の独特の音色、ニュアンスの豊かさを存分に引き出しつつ、常に引き締まった緊張感で牽引している。それでいて、いい意味でとてもノリの良い演奏で、こういう乗ったときのウィーン・フィルはやはりすごい演奏をする。

 第4楽章の第2主題が長調で登場する場面では大概の録音でシロフォンが「タッタカタッタカ」というリズムが聞こえてくるのだが、ウィーンフィルの弦楽器の響きがすべてを埋め尽くしてほとんど聞こえて来ない。フィナーレのラのユニソンも圧巻。
 一方で第1楽章終盤や第3楽章での透き通るような空気のなかで、ニュアンスたっぷりの表現にも感銘を受ける。

2022年3月5日土曜日

ブラームス/交響曲第4番 ヴァント指揮 北ドイツ放送響

ブラームス/交響曲第4番ホ短調
指揮:ギュンター・ヴァント
※Spotify

1996年〜97年録音
カタログ番号:09026633482 から

 私の尊敬する、ある演奏家で指揮者の方が、雑誌のインタビューで、指揮者として反面教師にしているのはギュンター・ヴァントだと答えている。ヴァントのタクトの元で演奏したさいにヴァントの猜疑心から来る執拗な要求は、オーケストラを不安にさせ、こういうやり方をしてはいけないと肝に命じたそうだ。

 ただ、オーケストラに対する猜疑心の強さは完璧主義の裏返しだっただろう。徹底的に磨き抜かれ、統率されたボウイングによって表現される峻厳な弦楽器の音色は、ヴァントと北ドイツ放送響のコンビでしか聴けないものがある。

 ブラームスの全集の中から1枚選べと言われれば、この4番になると思う。派手な演出や情感に訴えかける仕掛けや飛び道具は一切なし。エンターテイメント性は皆無で、正面突破の演奏。しかし、その音の作り込みの見事さ(特に低音部がスゴイ)は驚嘆するしか無い。圧巻は第2楽章、感傷に浸ろうというこちらの甘い考えをうち砕いてくれる。特に7分40秒以降の
弦楽の重厚な調べ、聞き終わるとロマンチックに浸るどころか、何か生きる活力をもらうような、そんな演奏。