2021年10月23日土曜日

フォーレ ヴァイオリン・ソナタ第1番 カプソン&ダルベルト

フォーレ ヴァイオリン・ソナタ第1番

ヴァイオリン:ルノー・カプソン

ピアノ:ミシェル・ダルベルト

374.jpg 
※Spotify

https://pref-okayama.ml.naxos.jp/work/1306861
※NML(岡山県立図書館利用者用のURL)

 ヴァイオリンの物憂げなメロディーとピアノが純化されたハーモニーを奏でていく。言葉で表現しがたい、印象的な美しさを湛えている。ただ、後期の作品のような不安定な和声はこの作品ではそれほど聴こえてこず、正統的なロマン派の雰囲気がある。
 カプソンのヴァイオリンはテクニックも凄いのだが、それよりも音の清廉さが印象に残った。ダルベルトのピアノが少し奥まった感じの録音なのだが、粒の立った品のある音でニュアンスたっぷりにカプソンに付ける。
 それにしても、こういった全集の場合、Spotifyにはどの曲をどの奏者が演奏しているのかの詳しいクレジットが無い。その点、やはりクラシック専用ストリーミングのNMLの情報量は貴重。

2021年10月16日土曜日

フランク/交響曲ニ短調 小澤&ボストン響

フランク/交響曲ニ短調
小澤征爾指揮
ボストン交響楽団


カタログNo : UCCG52090
録音時期:1991年11月、12月
録音場所:ボストン、シンフォニー・ホール

https://pref-okayama.ml.naxos.jp/album/00028947957829
※ナクソス・ミュージック・ライブラリー、岡山県立図書館利用者用URL

 この録音をSpotifyで探したが、どうやら収録されていないようで意外。小澤の膨大な録音の中で、「この曲こそ、小澤の録音でなければ!」というものの一つだと思うのだが。
 セザール・フランクはベルギーに生まれてパリで活躍した作曲家ではあるが、ベートーヴェンやワーグナーの影響を強く受け、ラテン系の洗練された旋律と、ドイツ的な重厚さを併せ持つ。ボストン響もミュンシュ以来この曲を得意としているらしく、メロディーはよく歌い、半音進行での曲の雰囲気の移り変わり、そして拍節感の明確な以前の小澤のタクトと相まって、堅牢な見事な演奏だと思う。

 一方で、第1循環主題、弦のトレモロがまるで嗚咽のように心に響き、そしてその後に現れる第2循環との間をつなぐ木管のスタッカート、永遠に晴れることにないと思われていた分厚い曇
天から、金色の光が差し込むような感じなど、ドロドロとした情念と救いの光との対比が心を捉える。今から丁度30年前の録音だが、2010年代の小澤の鬼気迫るような録音群の萌芽が現れているように感じる。
 最終楽章の第1楽章、第2楽章で使われた旋律が再現されて、最後のフィナーレへ向かっていく場面のうねりの持っていき方は、小澤&ボストン響の真骨頂。この曲の録音の第一選択肢としてプレイリストには欠かせない。

2021年10月9日土曜日

ブラームス/ピアノ協奏曲第1番 ブレンデル(Pf)&アバド&ベルリン・フィル

ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
ピアノ:アルフレート・ブレンデル
指揮クラウディオ・アバド
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


https://open.spotify.com/track/0EB2d6ftiLG4S4TIeAL2Lo?si=HB9jURfFQtylOlNIoSfJdA&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify

カタログ番号:UCCP7062
1986年9月 ベルリンでの録音

 前期ロマン派:シューマン・リスト・ショパンらの協奏曲とは構造そのものが違い、『ピアノ入り交響曲』といった大規模な構成になっている一方で、ブラームス20代前半の作品ということもあり、後年の交響曲で見られる鉄壁で隙の無いオーケストレーションにまでは昇華しきっていない。オーケストラ・ソリストともに表現力を試される楽曲だと思う。
 良い演奏で聴いている時には晩年の作品の第2番に負けないぐらいの傑作に思えてくる。アバド&ブレンデル&ベルリン・フィルの演奏は、間違いなくこの曲の傑作性をえぐりだしている名演だと思う。
 映画やTVドラマで、脚本にいまいちまとまりが欠けるところがあっても役者が揃えば名作になる、というのにも似ている。

 もう30年以上前になるが、同じオケ・ソリスト・指揮者で実演で聴いているのだが、その時の印象は、第1楽章のオーケストラからして轟音が鳴り響き、それに対峙するブレンデルの演奏も、まるでハンマーを振り下ろすがごとく迫力に圧倒された。なるほど、だからハンマークラヴィーアという名称なのが納得がいくような印象だった。
 しかし、こうして今聴いてみると、ブレンデルの円熟の極みとも言えるような、特に第2楽章での心に染み入るような繊細な音が印象に残る。
 ベルリン・フィルの音はやはり豪華絢爛で雄弁、ソロ楽器がため息が出るほど上手い。この音に対して互角以上に対峙していけるピアニストは、このブレンデル以外には、なかなか居なかっただろう。

2021年10月2日土曜日

ドヴォルザーク/交響曲第6番 ノイマン&チェコ・フィル

ドヴォルザーク/交響曲第6番

ヴァーツラフ・ノイマン指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

※Spotify


 ドヴォルザークの交響曲の中では、8番の次に6番が好きかも知れない。明るい旋律と豊かな情緒に溢れている。ブラームスの2番からインスピレーションを得て作曲された曲のようで、なるほどこれはドヴォルザークの田園交響曲であるなあ、と思う。

 ノイマンがヴィオラ奏者出身ということもあって、弦楽器の音色の変化の付け方と、ハーモニーの創り方が素晴らしい。あと、木管、特にオーボエとフルートの音を聴いていると、守りの中や小麦畑の景色が浮かんでくるようだ。チェコ・フィルの伝統の音と相まって、終始、伸び伸びとたおやかな演奏に仕上がっている。

 クーベリック、アンチェルといった才気あふれる巨匠たちが、政治的な事情でチェコ・フィルを去らざるを得なくなった歴史があり、ノイマンに対する評価は、これら二人に何かと比較されて、あまり高くない(気がする)。88年のチェコ・フィルの来日公演で実演に接して震えるような感動を覚えた私としては、あの頃のチェコ・フィルの水準を維持していたのは間違いなくノイマンの功績であり、今でも尊敬する指揮者。交響曲全集の中でも、特にこの6番に関しては他の演奏の追随を許さない味わい深い演奏だと思う。