2021年9月25日土曜日

チャイコフスキー/交響曲第5番 インバル&都響

チャイコフスキー/交響曲第5番ホ短調
指揮:エリアフ・インバル
東京都交響楽団
※ナクソス・ミュージックライブラリ(岡山県立図書館利用者IDのログインURL)
カタログNo : OVCL00407
2009年3月29日 サントリーホールにてライヴ収録

 先日の都響の岡山公演の熱演を聴いて以来、ヘビーローテーションになっている音源。
 インバルのアーティキュレーションは、独特な部分も多く、特に第二楽章では硬派な解釈をするインバルのイメージとは違い、意外にもねっとりとした解釈となっている。
 そのインバルのタクトに応える都響の強靭で一糸乱れぬアンサンブルは本当に見事というほか無い。特に音楽が高揚していく場面での熱量の高い演奏や、第4楽章でのベースの瞬発力は「ソ連」時代のオーケストラを彷彿とさせる。
 一方で、下野竜也の指揮で実演を聴いた時に感じた、豊かな倍音を湛えた弦の「泣き」は録音ではそこまで劇的には聴こえて来ない。NMLじゃ満足出来ずにハイレゾ音源を購入したものの、岡山シンフォニーホールに鳴り響いた、ここぞという場面「泣き」の入った音とは結構隔たりがある。オクタヴィア・レコードの優秀なスタッフがサントリーホールでDSD録音を行っても、やはり本物のオーケストラの音をすべて再現できるわけではないんだな。

2021年9月17日金曜日

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番 ノット&東京交響楽団

ショスタコーヴィチ/交響曲第5番
指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団


https://pref-okayama.ml.naxos.jp/album/OVCL-00702
※ナクソス・ミュージックライブラリ(岡山県立図書館利用者IDのログインURL)

カタログ番号:OVCL-00702
2019年5月 サントリーホール(東京)でのライヴ録音

 いや〜、ノット・ワールドにやられた。聴き終わってから10分ほどぼーっとするほどの熱量・情報量のある演奏。これ、ライブで聴いた人は、凄い体験やったろうね。

 先日プレイリストに追加したラフマニノフは、細部にまで神経が行き届いた緻密で、かつ磨き抜かれた美しさが印象に残った。
 しかし、このショスタコーヴィチは、弦のアーティキュレーションにこだわり、ジェットコースターのようなテンポやダイナミクスの変化を聴かせてくれる。いやあ、上手い、このオケは本当に実力が高い。この曲が持つ痙攣的な要素を大きなスケールで見事に表現している。

 このコンビの作り出す音楽で共通しているのは、隅々まで血が通った、「丹精込めた」サウンド。なんとかしてノットと東響のコンビの生演奏が聴けないものかなあ。



2021年9月10日金曜日

ラフマニノフ/交響曲第2番 ノット&東響

ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調
指揮:ジョナサン・ノット
東京交響楽団

※ナクソス・ミュージックライブラリ(岡山県立図書館利用者IDのログインURL)

カタログ番号:OVCL-00691
2018年11月3日、東京、サントリーホールでのライヴ録音

 いやもうぐうの音も出ない、ノット&東京の会心の演奏。
 まばゆいばかりの輝きのある黄金サウンドと、驚異の運動性能。煽る場面での堅牢なアンサンブルを聴いていると、日本のオーケストラもここまで来たか、という感慨を抱かずにはいられない。

 ロシアのオーケストラや指揮者の手によるラフマニノフとは一味ちがうのが、メロディアスな場面で甘くなりすぎず、繰り返し聴けば聴くほど判る緻密な表現。しかも真面目すぎず(ここ重要!!)「緻密に遊ぶ」演奏に頭がほぐれていく。
 第2楽章をここまで躍動させた演奏はそうは無い。第3楽章の美しさは比類なく、なかでも木管のソロは見事だし、楽章中間部の弦が折り重なって盛り上がっていく場面は、ここぞとばかりにポルタメントを効かせて最高にいい!

 ニコ生で何度もノットの指揮姿を見ているからか、オーケストラを掌中に収めて、ダイナミックに牽引していく様子が目に浮かぶ。

2021年9月3日金曜日

シベリウス/交響曲第1番 P.ヤルヴィ&パリ管

シベリウス/交響曲第1番ホ短調
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
パリ管弦楽団



https://open.spotify.com/track/5B6KwIczfgKY38qL435OIC?si=LN-Pcs4tSz2WqMihLUWLwQ&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify

パリ、サル・プレイエルでのライヴ録音(2013年)

 聴く前の第一印象は「はっ!?パリ管のシベリウス?」だったが、聴いてみるとやみつきになってしまった。
 確かにシベリウスの音楽が持つ、北欧の自然や寒帯地域の気候を感じさせる冷涼感というのは薄い。
 しかし、音楽が神話の世界の英雄譚のように雄弁だ。シベリウスは数多くの劇音楽を書いており、交響詩のなかにも神話を題材にしたものが多いことを考えると、このアプローチは大いに「有り」だと思う。

 何より、パリ管の表現力の多彩さ、力強さ、同時に一点の曇りのないクリアな響きが存分に発揮されている。ヤルヴィ&パリ管の生演奏でカレリア組曲を聴いたことがあるが、あの時の心を動かされた感動が蘇ってくる。

 第1楽章から荒ぶる父性を感じさせるティンパニや金管のアタック(しかもその金管のフォルテッシモの音までも心地よいこと!)がある一方で、再現部で魅せる1音1音を慈しむような表現にほろりとさせられる。
 弦楽器の表現のパレットの多彩さも聴きどころの一つ。主旋律を大いに歌ってみたり、太陽のような輝き、そよ風のやさしさ、かと思うと嵐のような激しさ。