2021年6月25日金曜日

マーラー/交響曲第2番『復活』 ヤンソンス&RCO 

マーラー/交響曲第2番『復活』指揮:マリス・ヤンソンス
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
ソプラノ:リカルダ・メルベート
メゾソプラノ:ベルナルダ・フィンク
合唱:ロンドン・シンフォニー・コーラス
2009年12月録音 

https://open.spotify.com/album/4bApuTkdbndoBPUBj2xHSw?si=eSfAhUJ0SmePGnnK9hNjtA&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify

 DVD付きSACDでも持っているが(いや、SACD付きDVDか?)、出先でもスマホとイヤホンで手軽に聴きたいのでプレイリストには欠かせない。

 第1楽章冒頭から弦の刻みの抑揚を大きく取って、まさにヤンソンス節が聴こえてくるが、細かいダイナミクスの調整、一つ一つのフレーズの輪郭をきっちりと分けて骨太に構築していくのもヤンソンス流。RCOのマーラーはシャイーやハイティンクとの録音も素晴らしかったが、コンセルトヘボウの残響を考慮してか、前2者はややまったりとした輪郭の録音だった。しかし、このヤンソンスはシャープな音どくりを志向していて、ライブ録音ゆえのオーケストラの張り詰めた緊張感もよく録れている。

 第4楽章の本当に繊細で柔らかい伴奏、そしてその後の第5楽章冒頭のトッティーの大迫力へのギア・チェンジ、それからフィナーレへかけての音の奔流は圧巻。しかもRCOの音の美しさが際立つ。まざりっ気の無いハーモニーによる強力な音圧にため息が出る。
 ビロードの弦・黄金の管(特にホルン!)といわれる名器(RCO)の実力と美点を存分に駆使した、鮮やかな色彩に彩られた素晴らしい演奏。

2021年6月18日金曜日

ブルックナー/交響曲第7番 ヤンソンス&バイエルン放送響

ブルックナー/交響曲第7番

指揮:マリス・ヤンソンス

バイエルン放送交響楽団


https://open.spotify.com/album/4hiFP7Tv9E1Kt9ojgxnxo8?si=mPzqyIIYRuqnr0iVUJzIIA&utm_source=copy-link
※Spotify

カタログ番号:403571900100
レーベル:BR Klassik
2009年 ウィーン・ムジークフェラインザールでのライヴ録音

 21世紀に入って20年以上が経つが、現在のところ今世紀で最も素晴らしいブルックナー7番の演奏だと思っている。まずもって、オーケストラが凄い・上手い・圧倒される。弦の音の輝かしさ、木管の柔らかさ、金管の音色の自在さ、そしてトッティになった時の迫力と、この世のものとは思えないハーモニーの煌き。現代最高のオーケストラだと思う。演奏が終わってみると、拍手が起こることで、これがライヴ録音だったことを思い出すのだけれど、それが信じられないぐらいの完成度。

 ヤンソンスは後期ロマン派〜現代音楽が得意分野で、独特のアクセントやクレッシェンドを聴くと「ああ、ヤンソンスやなあ!」と思うのだが、このブルックナーではそうした独特の表現を廃し、じっくりと音楽を進めていく。しかし、彼独特のポジティブなオーラが溢れ、人間味の厚さ、第1楽章〜最終楽章までを通して聴いた時に感じる、演奏設計の見事さは、やはりヤンソンスだ。第2楽章までをじっくりと進めて、第3楽章を疾走し、そのまま(ブルックナーにしては)短い最終楽章で一気呵成に纏め上げる手腕には脱帽。

 このプレイリスト・ブログを書き始めたきっかけの一つが、ヤンソンスの死の報に触れたことだった。彼の音楽は僕を楽しませ、勇気づけ、そして癒やしてくれた。もっと取り上げて行きたいと思っている。

2021年6月11日金曜日

ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」 ファウスト&メルニコフ

 ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」

ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ


https://open.spotify.com/album/69QcG2rXHWtFF7Up3ki3Ng?si=PvK6p9ouSfOVqUdE1c1Mdw&utm_source=copy-link

※Spotify

カタログ番号:HMC902025.27

 何年か前に、このデュオの来日公演があり、聴かれた方の感想が絶賛の嵐だったので、聴いてみると・・・、やっぱりこれは凄いや。 
 ペダルをあまり使わず、シュッとした輪郭のメルニコフのピアノに、こちらもヴィヴラート抑えめで、激烈かつキレキレの演奏を展開するイザベル。この演奏の切れ味は日本刀の名刀を想像させる。愛でて感動するところも共通する。音楽に曖昧なところが無い。これだけ強いアクセントをつけながら、両者とも音色が濁らない。
 そして、エネルギーが凄い。イザベルは女性ヴァイオリニストの演奏の中でも随一じゃないだろうか。あのしなやかな体躯から、どうやってこんな音を出せるのか。

 今のところ、数多あるクロイツェル・ソナタの演奏の中で随一の存在になっている。

2021年6月4日金曜日

モーツァルト/弦楽四重奏曲第19番「不協和音」ほか キアロスクーロQ

モーツァルト/弦楽四重奏曲第19番「不協和音」、第13番

キアロスクーロQ


※Spotify
 キアロスクーロ(Chiaroscuro)とは、美術用語で明暗とか陰影の意味らしい。このカルテットのメンバーは
 アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
 パブロ・エルナン・ベネディ(ヴァイオリン)
 エミリエ・ヘーンルント(ヴィオラ)
 クレール・ティリオン(チェロ)
 僕はイブラギモヴァ目当てで聴くようになった。
 一曲目が19番「不協和音」の序奏から、現代音楽のような響きに仰天した。調和ではなく何かが崩壊していくような不安を感じさせ、「これはいったいどんな世界に連れて行かれるか」と不安になった。自分が聴いた中で一番、不協和音を最も強調していたクイケン四重奏団よりも尖っている。
 序奏が終わると一転、研ぎ澄まされたピュアトーンで紡ぎ出されるモーツァルトは、本当に新鮮。基本はピリオド奏法のアプローチだが、ふくよかさも兼ね備えている。
 このまじりっ気のない音は一度聴くと癖になってしまう。