2021年8月28日土曜日

シベリウス/交響曲第6番 ベルグルンド&ヘルシンキ・フィル

シベリウス/交響曲第6番
指揮:パーヴォ・ベルグルンド
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団


https://open.spotify.com/track/0YRlaHEhUOir9lBBR0gzW2?si=qQYrrnxwSVOjUItMdcQLXQ&utm_source=copy-link&dl_branch=1
※Spotify

 夏のシベリウス・ブームがやって来てしまった。
 ハイドン・モーツアルト以来、マーラーに至るまで、大編成化・肥大化することが『進歩』として受け入れられてきた『交響曲』の分野を「シンフォニー」=「完全な協和の響き」という語源の原点に立ち戻って結晶化したような作品。
 この作品をはじめて聞いたのが、このベルグルンド&ヘルシンキ・フィルの演奏で、この演奏がデフォルトとして確立されてしまい、他のどの名盤を聞いてもしっくり来なくなっている。
 指揮者もオーケストラも愛情を込めて演奏している。湖に立ち上る霧、それが晴れるとお花畑が一面に広がり、雲が立ち込めて雷鳴が轟く、そんなヴィジョンが目に浮かんでは消えていく。
 第3楽章での聴いたら忘れない民謡的なメロディーの場面も印象的。凍えるような透明感、透き通るようでいて鮮やかな色彩を見事に表現している。聞き終わると胸にじわりと込み上げるものがあり、余韻に浸ってしまうのだ。

2021年8月21日土曜日

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 (Vn)ハーン サロネン&スウェーデン放送交響楽団

シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン
指揮:エサ=ペッカ・サロネン
スウェーデン放送交響楽団

※Spotify

 お盆までは35度を超える暑さが続いた。こんな時はシベリウスを聴くに限る。
 ヒラリー・ハーン音が輝いている。あまりにも素晴らしすぎて、この音が聴ける幸せを感じて頬が緩む。この曲の第2楽章は数あるヴァイオリン協奏曲の中で一番好きなのだが、一音一音が胸が締め付けられるほど美しい。2100年頃に21世紀最高のヴァイオリニストは?という問いが立てられれば、間違いなくその一人として数えられるだろう。

 音の素性だけでなく、第3楽章でのテクニックも凄い、音が理想的な位置に次々に収まっていくのを聴くのは至福。ヒラリーのキレキレのヴァイオリンに付けるサロネンのタクトも冴えわたっている。

 加えて、この音源のA面(という言い方、古いなーと思いつつ、アーティストが自分のアルバムについて、どちらをメインと考えているかが解りやすい)はシェーンベルクで、普段はほとんど聴かない曲なのだが、ハーンの演奏を聴いていると「これほど聴きやすい曲だったのか」という発見があった。

2021年8月13日金曜日

ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 カーラー(Vn)&インキネン(Co)&ボーンマス響

ブラームス/ヴァイオリン協奏曲ニ長調
ヴァイオリン:イリヤ・カーラー
指揮:ピエタリ・インキネン
ボーンマス交響楽団


https://open.spotify.com/track/1uMaD9gnv58LYgBP9n8hXe?si=4unDLhCwRhWA1ZrBiUWVDg&utm_source=copy-link&dl_branch=1

※Spotify

カタログ番号:8.570321
録音: 12-13 June 2007, Concert Hall, Lighthouse, Poole, UK

 世界七不思議というものがあるが、クラシック音楽世界七不思議があるとしたら、その一つは「ヴァイオリニストのイリヤ・カーラーが、なぜもっと評価されないのか」になると思う。僕は21世紀最高のヴァイオリニストの一人、といっても言い過ぎではないと思うのだが。
 カーラーのヴァイオリンは、まず、その音色が素晴らしい。独特の輝きとコクの深さが感じられ、聴いていて愉悦を感じるような魅力溢れる音。これほどの音が出せる現役のヴァイオリニストは、デュメイぐらいだろう。
 演奏もテクニックはさることながら、歌いに歌う。細部にまで丁寧に繊細に奏で、かつ強奏する場面ではまことに力強い。全方位に素晴らしいヴァイオリニストだと思う。これほどの音楽性を持ったヴァイオリニストはそうは居ない。今世紀最高のヴァイオリニストの一人なのは間違いない。ナクソス・レーベルもメジャーと言えばメジャーなのだが、もっとこう、例えばドレスデン・シュターツカペレを従えてグラモフォンで録音したり、あるいはロイヤル・コンセルトヘボウ管やサンクトペテルブルグ管と世界ツアーをするようなレベルのヴァイオリニストだと思うのだが、私が生演奏で聴いたのは、実力的にはとても一流とは言えない(二流もあやしい)ベルリン・シンフォニカーだった。

 僕のようにカーラーの処遇を不思議に思っている方は多いようで、こんなブログも拝見。なるほど、指導者としてのキャリアを優先しているのだな。しかし、それにしても・・・である。
 このプレイリスト・ブログにはイリヤ・カーラーの素晴らしい録音群も加えていきたいと思っている。
 カーラーの録音音源は、ロシアでの録音は音質がイマイチなものもあるが、このイギリスでの録音は本当に素晴らしい。ハイレゾ企画ではないのに、ハイレゾのような緻密で奥行きのある音が魅力。

2021年8月6日金曜日

ブラームス/交響曲第2番 ラトル&ベルリン・フィル

ブラームス/交響曲第2番
サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


https://open.spotify.com/track/21g3oksSYHlsqP44aHdoH2?si=6QDyH9kkTkGXPhBO-Q1SZw&utm_source=copy-link&dl_branch=1

※Spotofy

カタログ番号:WPGS50018

2008年11月 ベルリン・フィルハーモニーでのライブ録音

 カラヤン時代の絵の具を何層にも重ねた油絵のような濃厚なブラームスではないが、ラトルのイメージからすると思ったより重厚で、一聴した印象ではオーソドックスな演奏であり、ベルリン・フィルのブラームスのDNAを強く感じる。かといって伝統の音に引きずられていることもなく、ラトル氏の個性が随所に見られる。やっぱりディテールは細かいなあ(チェロバスの響きの芸の細かさといったら・・・)と思うけれど、全体としては音楽が自然に流れる感じ(ベルリン・フィルに伝統的な演奏を求める人にはあざとさを感じるかもしれないが)。この音源のCDにはライヴ演奏のDVDも付いてて、大枠はオーケストラに任せて、細かいニュアンスや表情をラトルが付けていくのがよく解る。
 第3楽章なんて、本当に新鮮!この曲なんて何百人もの巨匠が料理してきたと思うけれど、まだまだやれることがいっぱいあるんだなあ~と感心する。

 ラトルの音楽づくりだけじゃなく、木管・金管の見事な演奏も聴きどころ。