2022年3月5日土曜日

ブラームス/交響曲第4番 ヴァント指揮 北ドイツ放送響

ブラームス/交響曲第4番ホ短調
指揮:ギュンター・ヴァント
※Spotify

1996年〜97年録音
カタログ番号:09026633482 から

 私の尊敬する、ある演奏家で指揮者の方が、雑誌のインタビューで、指揮者として反面教師にしているのはギュンター・ヴァントだと答えている。ヴァントのタクトの元で演奏したさいにヴァントの猜疑心から来る執拗な要求は、オーケストラを不安にさせ、こういうやり方をしてはいけないと肝に命じたそうだ。

 ただ、オーケストラに対する猜疑心の強さは完璧主義の裏返しだっただろう。徹底的に磨き抜かれ、統率されたボウイングによって表現される峻厳な弦楽器の音色は、ヴァントと北ドイツ放送響のコンビでしか聴けないものがある。

 ブラームスの全集の中から1枚選べと言われれば、この4番になると思う。派手な演出や情感に訴えかける仕掛けや飛び道具は一切なし。エンターテイメント性は皆無で、正面突破の演奏。しかし、その音の作り込みの見事さ(特に低音部がスゴイ)は驚嘆するしか無い。圧巻は第2楽章、感傷に浸ろうというこちらの甘い考えをうち砕いてくれる。特に7分40秒以降の
弦楽の重厚な調べ、聞き終わるとロマンチックに浸るどころか、何か生きる活力をもらうような、そんな演奏。

0 件のコメント:

コメントを投稿